歯周病は虫歯のように削って治すだけではないので、進行具合によっても治療の期間や内容が大きく異なります。
歯周病は成人では多くの人が患っている生活習慣病といわれていますが、実際にどのような治療をしているかご存じの方も少ないのではないでしょうか?
そこで、今回は歯周病の治療の流れや内容について詳しくご紹介します。
目次
歯周病治療の流れ
Step1症状の検査
歯ぐきの状態を確認するために『プローブ』という器具で歯ぐきの深さである『歯周ポケット』の深さを測っていきます。
歯周ポケットは3ミリ以下では正常で4ミリ以上になると、歯肉炎や歯周病の状態になります。
また、7ミリ以上になると重度の歯周病になります。
また、歯の動きである動揺がないか、出血の有無もチェックします。
動揺はピンセットで歯を動かして、動きがあるか確認します。
症状が重く、痛みや腫れが強い場合には応急処置を行います。
歯ぐきに膿がたまっている場合には切開して膿を出します。
必要に応じて抗生物質を数日服用していただくこともあります。
Step2 スケーリング(歯石除去)
歯ぐきの上にあるプラークや歯石を専用の機械で除去します。
お口に着いている汚れによって回数は異なりますが、1~6回程度で行われることが多いです。
歯ぐきが炎症を起こしている時は少し出血がすることがありますが、炎症を引き起こしている原因のプラークや歯石を除去することで少しずつ出血はおさまります。
歯周病の治療のスケーリングは保険が適応できて、3~6カ月程度で行われます。
Step3歯周ポケットの検査(再審査)
歯ぐきの炎症や出血がおさまっているか確認します。
歯周ポケットも確認して深さが改善しているかチェックします。
初期の歯周病であれば、歯ぐきが改善していればこの段階で治療が終わります。
初期症状としては、歯磨きした時に出血する、歯ぐきが腫れる状態です。
Step4歯ぐきの深い部分の歯石除去(SRP)
歯ぐきの下に着いてしまった歯石を除去していきます。
歯ぐきの下の部分では、毒性が強いバイオフィルムが形成されているので、キュレットと呼ばれる刀のような形をした器具を使用して歯石をこそぎ取ります。
歯石を除去すると歯の面がなめらかになり、汚れがつきにくくなります。
歯ぐきの深い部分の歯石を除去するので、歯周ポケットの深さによりますが、麻酔をして治療することが多いです。
Step5歯周ポケットの再検査
歯ぐきの下の歯石をすべて除去出来たら、もう1度歯周歯周ポケットの検査をします。
炎症や出血、歯ぐきの深さが改善しているかチェックします。
中等度程度の歯周病は、この段階で歯周病治療が終わることが多いです。
Step6必要な場合歯周外科治療
歯周病が中度~末期の方で歯周外科治療が必要な場合は外科手術を行います。
Step7歯周ポケットの再検査
歯周外科治療が終わった方は、歯ぐきの歯周ポケットが改善されているか、歯ぐきの出血や腫れなどを確認していきます。
Step8メインテンス
歯周病の治療が終わって、その後自宅でケアをすることになりますが、お口の状態が保たれているか3~6カ月程度の期間で定期健診のメインテナンスを行いましょう。
メインテナンスで行うのは
- 歯周ポケットの深さの確認
- 出血や腫れがないか確認
- プラークと歯石除去
- ブラッシング指導
を行います。
毎日のケアで落としきれない汚れがある場合は除去します。
またその部分の汚れの落とし方やケア用品を使用した方が良い場合にはお口に合ったものを確認していきます。
汚れが残っているままになると、歯周病の治療を行っても逆戻りしてしまうので、メインテナンスでお口の環境を整えましょう。
歯周病治療の料金
歯周病の治療期間や料金はお口の状態によって異なります。
治療期間は目安として1カ月~1年程度です。
症状が軽いと治療期間は短くなり、症状が末期になると期間が長くなってしまいます。
また、料金も治療期間とリンクして短い場合には抑えられます。
歯周病は自覚症状が少なく、いつの間にか進行していることも多い病気なので、早めに治療を開始しましょう。
初期の歯周病
初期の歯周病は歯ぐきの腫れや出血があり少しずつ骨が減ってきている状態です。
自覚症状が少ない段階なので、歯磨きで出血するような症状が出た時には早めに歯科医院を受診しましょう。
〈治療期間の目安〉 1~2カ月程度
費用 1回 1800~2000円程度(3割負担の場合)
トータルの目安 5000~10000円程度(3割負担の場合)
保険外(歯科医院によって異なる) 10000~50000円程度
中度の歯周病
中度は歯を支えている骨がかなり減少している状態です。
歯周病治療を行って症状が安定すれば歯を残せる段階です。
歯が少し動く段階です。
また、歯ぐきが下がって歯が伸びたように見えます。
〈治療期間の目安〉約3カ月~1年程度
費用 1回 1800~2000円程度(3割負担)
外科手術(1か所) 3000円程度(3割負担)
トータルの目安 10000~50000円程度(3割負担)
保険外 50000~500000円程度
重度の歯周病
重度の歯周病になると、歯がグラグラする場合や、症状が進行すると抜け落ちてしまうこともあります。
歯を支えている骨も半分以上溶けてしまっている状態です。
動揺が強いとかむと痛みがあるので、抜歯が必要な場合もあります。
〈治療期間の目安〉 1年以上(目安)
費用 1回 1800~2000円程度(3割負担)
外科手術(1か所) 3000円程度(3割負担)
トータルの目安 40000~100000程度(3割負担)
保険外 150000~300000円程度
歯石除去の費用
歯周病の治療の中で歯石除去を行いますが、初めに検査でレントゲンや歯周ポケットを確認する検査があります。
これらは保険の中で治療ができますが、検査代を含めた費用が約『4000円』程度です。
また、歯ぐきの深い部分に歯石が着いている場合には追加で1回2000円程度の費用がかかることがあります。
歯周病治療の種類
スケーリング
歯周病の原因になる歯石を専用の器具で取ることをスケーリングといいます。
一般的に超音波で振動させた機械で水を出しながら歯石を除去していきます。
スケーリングをする時に使用する器具は除去する場所や歯石の着き具合によって使いわけますが、小さな歯石を取る時には手で使用するハンドスケーラーを使用することもあります。
ルートプレーニング
歯ぐきの境目の歯周ポケットに歯石が着いた場合には、手で使用する『キュレット』を用いてルートプレーニングを行います。
歯ぐきの下の着いている歯石を除去して歯の面をつるつるにすることで、歯根と歯肉が着いて歯周ポケットが減少することを目的で行います。
歯磨き指導
歯周病を安定させるためには毎日のケアで『プラークコントロール』ができていることが重要です。
そのために、歯磨き指導でプラークをしっかり除去できるようにすることが目的です。
歯みがきは癖がつきやすく、良く磨けている所と磨き残しがある所があるため、磨き残しがある部分の磨き方を確認します。
丁寧な歯磨きの仕方を身につけて毎日のケアをしっかり行いましょう。
歯周外科治療の種類
フラップ治療
歯周ポケットの深い部分まで歯石が着いている時に行う外科治療で、歯ぐきを切開して歯石を除去する方法です。
歯ぐきを切開して、直接見ながら歯石を除去できるので歯根を確実にキレイにすることができます。
汚れを除去した後は、歯ぐきを縫合して1週間程度で抜糸になります。
再生治療
骨の再生治療は、歯周病が悪化して骨が減っている時に行います。
GTR法(再生法)
歯の根の周辺には歯ぐきの周辺組織と結合するために歯根膜というクッションの役割をする部分があります。
あごの骨が失われると、その部分に歯肉が入り込んでくるので歯ぐきの組織が再生するのを邪魔してしまいます。
再生したい部分に『メンブレン』という人工膜を入れてスペースを確保し、歯周組織が再生するのを促します。
エムドゲイン法
GTR法とおなじように歯周組織の再生を目的にした治療方法です。
GTR法では膜を使用してスペースを取りますが、エムドゲイン法は再生させたい部分にジェルを入れて歯周組織の再生を促します。
歯周病の最新治療
歯周内科(薬治療)
飲み薬で歯周病を治す最新の治療です。
顕微鏡で細菌の確認
確認した細菌の除去薬を内服して細菌の数を減らす
歯周ポケットを確認して、プラークと歯石を除去する
薬を内服して、細菌数を減らすことで歯ぐきの腫れが落ち着いて歯石を除去しやすくなるので、患者様の負担を軽くする治療です。
歯周病レーザー治療
レーザーは超音波のスケーラーが届きにくい深い歯周ポケットも、複雑な形の歯周ポケットの内部にも届くので、より精密に歯周ポケット内の歯石を除去できます。
また、炎症している部分は、レーザーを当てることで歯ぐきの治癒や歯根に再付着しやすい効果も期待できます。
また、歯周ポケットの中の内毒素も無毒化することができ、抗菌薬と違って耐菌性もないので継続して使用ができます。
漢方薬
漢方薬で歯周病に効果的なものもあります。
プラークや歯石が着いている場合には治療と並行して行う形ですが、炎症を抑える効果や、唾液が出やすくするものもあります。
歯肉の炎症を抑える
枇杷葉、桔梗などを服用すると歯肉の炎症を抑える効果があります。
プラークが着きにくい体質つくり
お口が乾燥するとプラークが着きやすく、歯周病になりやすい環境になります。
お口の中が乾燥しにくくなる麦門冬や天門冬などが効果を発揮してくれます。
骨を丈夫にする
骨を丈夫にする続断、骨砕補などが効果的です。
歯石が着いたままだと、漢方薬だけでは症状が改善しませんが、歯石除去の治療と並行して漢方薬の内服を行うことで効果的に治療ができます。
歯ぐきが腫れてすぐに病院に行けない場合の対応法
歯周病などで歯ぐきが腫れて膿などが出ている場合、できるだけ早く受診していただくことが望ましいのですが、どうしても受診ができない場合の応急処置をご紹介します。
根本的な治療ではなく、対処法ですので、通院できるようになったらできるだけ早めに病院を受診しましょう。
痛み止めを服用する
腫れや膿が出ていると痛みが出ることがあります。
痛みが強い時や眠れない時には市販の痛み止めを服用しましょう。
腫れている部分を冷やす
腫れている部分は血流が増加しているので、冷やしましょう。
ただ、腫れている所を直接冷やすと刺激が強くなりすぎてしまうので、頬側からタオルを水で冷やしたものを当てたり、タオルで氷を包んで冷やしてあげましょう。
安静にする
腫れている時は、血流が良くなることをするとより腫れや痛みが強くなります。
そのため、運動や飲酒などを避けて安静に過ごしましょう。
歯周病は放っておくとどんどん進行する病気です。
悪化すると歯を支えている骨が無くなって、歯を支えることができず、抜歯が必要になるという手遅れの状態になってしまうこともあります。
痛みや腫れが一時的に落ち着いても歯周病が治ったわけではないので早めに病院を受診しましょう。
歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなって歯石の除去が大変になってきます。
また、治療期間も長くなり、歯周病が安定するまでに長い期間をついやしてしまいます。
定期的に病院に通うことで早期発見・早期治療ができ、歯周病も早めに対処ができます。
お口の中に出血や腫れなどの症状が出ましたら1度来院してチェックすることをおすすめしています。